【完】素直じゃないね。
「俺の許可なく、こいつに触ろうとしてんじゃねぇよ」
甘ったるくて、でも透き通るような低い声。
顔を上げなくても分かってしまう。
この声は──高嶺だ。
なんで……?
なんで来てくれたの?
「他当たれよ。こいつは俺のだから」
さらっと放たれた言葉に、ドクンと心臓が揺れる。
普通なら、なに言ってんのよ!ってそう言えるのに声が出なかった。
この場をやり過ごす嘘だって分かってるのに、不意打ちで言われたからか、すごく動揺している自分がいて。
さらに高嶺とのゼロに等しい距離とが相まって、心臓はもう爆発寸前。