【完】素直じゃないね。


「さ、帰るぞ」


不意に、再び差し出された手。


「な、なに?」


「手。また逃げられても迷惑だから」


「でも……」


「手、ダメだったっけか」


思い出したかのような高嶺の呟きに、あたしは小さく頷く。


高嶺には手首を掴まれることが多いけど、手はまだ慣れてない。

手のひらって、密着する感じがするからか、他の箇所よりダイレクトに熱が伝わるからか、ぐんとハードルが上がる。


だけど、高嶺はその手を引っ込めようとしなかった。


それどころか、ずいっと近づけてくる。


「ほら」


「え?」


「男慣れ、した方がいいんじゃねぇの?
俺で練習すればいいじゃん」

< 64 / 409 >

この作品をシェア

pagetop