【完】素直じゃないね。
「さ、帰るぞ」
不意に、再び差し出された手。
「な、なに?」
「手。また逃げられても迷惑だから」
「でも……」
「手、ダメだったっけか」
思い出したかのような高嶺の呟きに、あたしは小さく頷く。
高嶺には手首を掴まれることが多いけど、手はまだ慣れてない。
手のひらって、密着する感じがするからか、他の箇所よりダイレクトに熱が伝わるからか、ぐんとハードルが上がる。
だけど、高嶺はその手を引っ込めようとしなかった。
それどころか、ずいっと近づけてくる。
「ほら」
「え?」
「男慣れ、した方がいいんじゃねぇの?
俺で練習すればいいじゃん」