【完】素直じゃないね。
と、その時。
「きゃーっ!」
ギャラリーから、一際大きな黄色い悲鳴が上がった。
さっきまでのざわめきとは、まるで違う。
この歓声の理由は。
「高嶺くーん♡」
スポーツ万能のプリンスだ。
高嶺のチームのバスケの試合が始まると、女子達は食い入るように見つめる。
試合の成り行きではなく、高嶺を。
「高嶺くん、相変わらずすごい人気だね……!」
「ほんと」
感心している乃亜に、あたしは膝に肘をつきながら相槌を打つ。
みんなして、あんな仮面に騙されちゃってさ。
……まぁ、たしかにかっこいいと認めざるを得ないけど。
シュートを決める姿、仲間達とハイタッチする姿、コートを走り抜ける姿。
どの瞬間を切り取ってもかっこいいんだから、なんかずるい。