赤ずきんと狼さんの恋物語
「可愛い…なにこの可愛い生き物…」
小さく何かを呟くと男は首から手を退かした。
「げほっげほっ…はぁはぁ…」
体か酸素を求めて、自然と呼吸が荒くなる。自然と涙が浮かんで来る。
その姿が目の前の男を刺激しているなんて、フェリルには分からなかった。
「やべぇ…殺すのもったいないな…連れて帰るか…」
「はぁ……なに?」
何やらブツブツと呟いている男を、私はじっと見つめた。
どうやら殺すのを止めたらしい。
その証拠に先ほどまであった瞳に宿る狂気が消え失せていた。
狂気の代わりにその瞳には、甘さを含んでいた。
「…?……ぁ」
安心したからか、いきなり体の力が抜け崩れ落ちそうになる。
「!」
私は衝撃に備えて目をぎゅっと瞑った。