☬あおむしは見た・携帯電話 ❤
一話 携帯電話
プロローグ

 ぼくは葉っぱの上から見ている。いろんな人の人生を。

世の中には肌の色の違う人々が、引きしめあって生きている。地球上の至るところで。

あるところで新しい命が誕生したかと思えば、またあるところでは幾つもの命が消えてゆく。

 ぼくたち、あおむしの世界でも、違う色のあおむしがたくさんいて、それぞれの生を楽しんでいるんだ。

 いずれぼくは、羽化して美しいアゲハチョウになり、遠くへ飛んで行くことになるだろう。

それまでは、多くの人と出会って、お互いに愛し合い励ましあいながら、これからもずっと生きていきたい・・・・。


 それにしても、こんな事件に遭遇するなんて、ぼく思ってもみなかったよ・・・。

‘‘‘‘‘‘‘‘‘‘‘‘‘‘‘‘‘‘‘‘‘‘‘‘‘‘‘‘‘‘‘‘‘‘‘‘


 携帯電話

 山の上から吹いてくる風に、少しだけど冷気が感じられる。暑かった夏もいよいよ終わりかな。

そういえば、このオートキャンプ場に入って来るキャンピングカーもめっきり少なくなってしまった。

 昨日は一台も来なかったキャンプ場に、今朝になってようやく一台の白いワゴン車が入って来た。

そのワゴン車はぼくのいる木のすぐ横に止まり、中から男の人と女の人、それになにやら賑やかな声がすると思ったら、男の子が二人出て来た。

< 1 / 9 >

この作品をシェア

pagetop