☬あおむしは見た・携帯電話 ❤
時々ケイタイの山の中から着メロが鳴り、先端のLED(発光ダイオード)がチカチカ点滅しているのが見える。

そのうちの一つから、昼間聞いたあの演歌の着メロが聞こえてきた。

ぼくはちょっと気にもなっていたので、びくびくしながらそのケイタイに近づき通話ボタンを押した。

「おっ、おい、おまえは誰だ。それはおれのケイタイだぞ」

「こっ、これ、あなたのですか?」

「そうだよ。いまダチのところからかけているんだ。それ拾ってくれたんだな、ありがとよ。で、いまそれ何処にあるんだ?」

「ぼ、ぼくの足元です」

「そうか、名前、何て言うんだ?」
「あっ、あおむしです」

「あおむしか、良い名前だな。それであおむしさんよ、そこは何ていう所だい?」

 えーと、キャンプの人たちが谷の森オートキャンプ場って言っていたっけ。

「谷の森オートキャンプ場って言っています」

「谷の森オートキャンプ場だな。わかった!プツン!」

そこで突然、通話が途切れた。なんか、とても慌てている感じだな・・・。

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