☬あおむしは見た・携帯電話 ❤
 いつの間にか山の頂きから真ん丸いお月さんが顔を出していた。

谷川のせせらぎが月明かりを受けてきらきら輝いている。

そろそろ寝る時間だなと思って柚子の木に戻りかけたとき、 ぴーひゃらぴーひゃ・・・・・。

またあのぴーひゃらがぼくの耳に飛び込んできた。

ぼくはチカチカ点滅しているそのケイタイまで這って行き、恐る恐る通話ボタンを押した。

「あっ、えり、誰か出たよ。ほら来てごらん、誰だろう」

 昼間とは違う男の人の声が聞こえてきた。

「もしもし、こんばんわー」

「こ、こんばんは・・・・」

「それ、私のケイタイなんです。拾って下さったんですね、ありがとう・・・・」

「い、いえ・・・・・」

「私、えりっていいます。あのー、あなたのお名前は?」

「あ、あおむしです・・・・」

「ふふ、あおむしさんですね。あのー、そちらは何ていう所なんでしょうか」

「ここですか?谷の森オートキャンプ場っていいます・・・」
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