恋と愛とシュシュ
2 指輪
「ききたくない」
カバンを振り回しそうな勢いで去ろうとする。
過去の恋人の結婚話などききたくなかった。
そんな瞳に、志皇はバン、とテーブルの上に何かを置いた。
「何よ」
瞳が振り返る。私がいつ何を行動しようと勝手でしょう、という顔つきだ。
「座れ。朝のシュシュだよ」
置いた手をゆっくり開くと、ピンク色のシュシュが、まるで花開くように広がった。
(シュシュ?)
(あー、あのシュシュ落としましたよってやつ)
「嘘つき」
仕事中に考えていたら、そもそも瞳はシュシュを使ってはおらず、落としようがないのだ。
「大学時代はよく使っていただろ。
もう、何でもいいから一旦座れよ。そんなに注目されたいのか」
はっと見回すと、他の客や、今にも声をかけてきそうな店員がいた。
あわてて瞳が座ると、志皇はそっとシュシュをつき出して来た。
シュシュを見た瞳は、小さく息を吐き、おずおずと両手で持った。
ピンクを基調に、キラキラとラメの入ったレース、
そしてその真ん中にはダイヤのついた指輪が目に入った。
そして、瞳の口から言葉が絞り出された。
「今まで何をしてたの」