結婚相手の条件
俗に言う、あーん、だ
まさか総務課長にしてもらうとは…
恥ずかしいからやめてくださいなんて
言えないくらい
総務課長は真顔
『…あ、あの、総務課長…』
帰っても大丈夫ですよ?と伝えようとしたが、総務課長は寝ている私と目線を合わせるように座り込み
おでこに貼られている冷却シートを
取り替えてくれた
近くで見る総務課長の顔は
意外に綺麗で髭も殆ど生えていない
あの人も、そうだった…と
あの日の事をなぜか思い出してしまった
「今はプライベートの時間なんだ、その役職で呼ぶの、止めてもらえますか?」
そういう総務課長も敬語だ
しかも威圧的な敬語
プライベート時間だと言っても
私はプライベートを共にしたいと思ってはいないから総務課長のままでいい
「井内薫です」
そう呼べと言われるような威圧的
仕方がない、と井内さん、と呼べば
違うと返ってくる