結婚相手の条件



睨みつけるように
井内さんを見ると
私の視線に気がつき
ニコッと笑い返してきた


「今日、帰りに寄るって言ったの忘れてたろ?葵はプライベートになると、ちょっと抜けてるからな。本当に心配」




…なんですと?
いやだぁー、と嬉しそうに
スミレは私の肩を叩く


スミレから見たら
ラブラブに見えるんだろうが
実際はそんなもんじゃない
井内さんに捕まってしまった
もう、逃げるのは無理だと理解した私



「お待たせしました!」



と、店員さんがなみなみの八海山を持ってきた
…おせーよ、と心で毒を吐き
一気に飲み干してやった


「せんぱいっ!」
「葵っ!」


二人の驚いた声なんてムシだ
呑んで呑んで
記憶を無くした方が楽だ

そう、現実逃避が一番だ
それ以外、考えられなかった


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