甘美なキョウダイ




それだけ可愛い美優さんにワイワイと話が盛り上がり、「髪の色は?」とか「髪の長さは?」とか自棄に細かい質問にも答えてその度どれだけ可愛いか力説もしていた時。




「名前なんて言うの?」




ふとりっちゃんの冷静な言葉に「美優さんだよ!名前まで可愛い!」と言ったらりっちゃんが目をこれでもかと見開いて立ち上った。





「美優ってあの相澤美優!?」



「え、りっちゃん知ってるの!?」




周りの男子やいつの間にか増えている女子も何事かとりっちゃんに視線を向けているが、りっちゃんはそんなこと気にせず興奮気味に机を両手でバン!と叩いた。




「めちゃくちゃ美人って有名じゃない!嘘志保の兄妹になったの!?あの相澤美優が!?」




相澤とは間違いなく美優さんの前の苗字だ。今は西條に変わったけれど、でも学校も相澤でこれからも通うと優香さんが言っていたし。




若干りっちゃんの勢いに押されながら頷くと、りっちゃんはこれでもかと言うほど顔を輝かせて私に詰め寄った。




「ならお兄さんは相澤悠斗さんでしょ!?」




「それも知ってるの!?」




これで完全にりっちゃんの言っている二人が私の知っている二人だと一致した。



そして私は、もう社会人の悠斗さんのことまで知っているりっちゃんの情報網に尊敬の念を送ることしか出来ない。




「伝説よ伝説!逆に何で知らないの!?え、ウソ志保のお兄さんが相澤悠斗さん!?それで同級生の相澤美優が妹か姉!?こんな志保が!?」




とうとう勢いのあまり逆切れしだしたりっちゃんに、クラスの女子がざわざわとお互い顔を見合わせていた。



「え、あの悠斗?」「美優って名前聞いたことある」「友達が同じ高校だけどファンクラブあるって言ってた」「お兄ちゃん悠斗さんと同じ学校で同じ学年だったらしいけどもう女子がすごかったって」「美優ちゃん見たことあるよ。もうほんっとうに可愛くて芸能人かと思った」




……マジで。



みんなの言葉に思わずポカンと口を開けてしまう。




いやそりゃあれだけイケメンであれだけ可愛かったらそれぐらい当然だろうけど。



思った以上に凄い二人のようで、そんな二人が私の兄妹だ何て呆然とするしかない。




「ねぇ、絶対に落ち着いたらまた紹介してね!」




親友でしょ!と今更沸いて来た現実感に立ち尽くしている私の手をりちゃんがこれでもかと握って来て、何度も念を押してきたので、取り敢えず必死に頷いた。




こんな別の学校にまで有名な二人だなんて。次会うとき緊張して顔見れないかも…。




もう私そっちのけで盛り上がっている周りの熱の高さに若干引いたものの、それでも私ってすごい役得かもと沸いて来た優越感に笑みをこぼした。









< 15 / 49 >

この作品をシェア

pagetop