甘美なキョウダイ
そんなドキドキの移動を得て、見慣れたホテルに着いたことにそっと安堵の息を吐いた。
あぁ緊張した…。
ホテルの入り口に車は付けられたので、ホテルの人が開けてくれたドアから一足先に車から降り、外の空気を兎に角肺に詰め込んだ。
私の後に続いた優香さんは優雅に微笑み、「さて行きましょう」とへばっている私の隣に立った。
お洒落な淡いサーモンピンクのワンピースを着こなしている優香さんは本当に美しいし品がある。
スカート丈は膝丈だけれど、肩が緩やかに開いているワンピースは品があるだけではなくて色気もあった。
そんな優香さんとは対照的に私は濃い藍色のワンピースを着ている。丈は優香さんよりもまだ少女らしく短いけれど、色気何てあるわけがない。
でも美優さんがこれを着れば見違える程色気が出るのだろうな、とふと思ったところで。
「……あの、美優さんは…?」
悠斗さんなら車を地下駐車場に入れに行っているのでいないのは当然だが、美優さんがいないと言うことに今更気づき優香さんに思わず言葉を掛けた。
今にもホテルへ入りそうだった優香さんは不思議そうに私を見て、「あぁ美優ね」と優香さんも今更気づいたように微笑んだ。
「きっとあのまま悠斗と一緒に行ったんじゃないかしら。大丈夫よ、後で合流出来るわ。さぁ、拓弥さんが待っているから急ぎましょう」
チラリと車が止まっていた場所に視線を向けるけどもうそこには別の車が止まっていた。
「……そう、ですね」
逆に美優さんがいたらもっと緊張していたので、まぁこれはこれでいいのかもしれない。
どこか腑に落ちない気もするけど先を急ぎたがっていることを隠さない優香さんに連れられ、ホテルのロビーをくぐった。