甘美なキョウダイ
丁度チェックインする宿泊客が多いのか、静かな賑わいをみせているロビーを通り抜け、丁度開いていたエレベーターに優香さんと乗り込んだ
既に最上階のボタンは押されていて、難なくエレベーターに運ばれ最上階へとついた。
エレベーターから降りて少し歩くとホテルの従業員が迎えてくれる。
「ようこそいらっしゃいました」
「西條よ。主人が先に席についている筈だから、案内して頂けるかしら」
「はい、西條様ですね。お先にお待ちになっております」
「後から男女二人も来ると思うから、同じ席に通してね」
「かしこまりました」
背筋をピンと伸ばして口角を上げている優香さんにホテルの人は丁寧に頭を下げ、「こちらへどうぞ」と先導していく。
席はどこも埋まっているものの、明るいロビーの雰囲気とはがらりと変わって大人な雰囲気を醸し出していた。
照明が暗くテーブルの上のキャンドルが原因だと思う。
そんなことを考えながら歩いていると、奥の方に一つ空いているテーブルを見つけ、そこにお父さんが座っていたので思わず笑顔を浮かべてしまった。
お父さんも私たちに気づき片手を上げてくれる。
6人掛けのテーブルの端にお父さんは座っていた。
だから一体どこに座ればいいのか悩んだが、ここは優香さんがお父さんの隣に座るべきね、と気を使い一足先に席に座った。
優香さんはそんな私の意図を組んでくれたのか「ありがとう」と微笑んで、レストランのフロアの人に椅子を引いて貰いお父さんの隣に腰掛けた。