政略結婚ですが愛されています
「ごめんね。近いうちに連れていってよ。佐都里がおいしいって言うお店に間違いはないから、楽しみにしてる」
このまま佐都里と一緒に行きたいところだけど、忙しい両親と兄たち夫婦が揃う機会は滅多にない。
母さんの誕生日のお祝いともなれば、なおさら無理だ。
「あ、この前連れていってくれたスープ専門店もおいしかったから、また行きたい」
「オッケー。でもハンバーグだってスープだって、それこそ和洋中どれをリクエストしても簡単に作ってくれる珠美のお料理のほうがよっぽどおいしいけどね」
佐都里の口調からは、今すぐにでも食べたいという気持ちが伝わってくる。
「簡単じゃないよ。レシピを見ながら必死で勉強して、ようやく佐都里に食べてもらえるレベルになったんだから」
「いやいや、そんな謙遜しなくてもいいでしょ。私が熱を出して会社を休んだ時に作ってくれた雑炊もすごくおいしかったし。私のリクエストに応えてなんでも上手に作れるほどの腕前なんだから、お店のひとつやふたつ出せるんじゃない?」
「お店なんて、そんなの無理無理……」
本気でそう思っているのか、佐都里の明らかに真剣な目に、私は口ごもった。