政略結婚ですが愛されています
「珠美のお料理だったら、行列店も夢じゃないと思うけどなあ。もったいないというか、欲がないというか」
佐都里は周囲の目を気にすることなく呆(あき)れた声を上げ、顔をしかめている。
「あーあ。珠美みたいにお料理とか手芸とか、家事力に優れたお嫁さんが欲しい。ひとり暮らしの私には、恋人よりもよっぽど必要だもん。ねえ、一緒に暮らさない?」
いいことを思いついたとばかりに、佐都里はあっという間に笑顔を浮かべてそう口にした。
「それも楽しそうだね。だったら私の両親を説得してくれる? お嬢さんをくださいとかなんとか言って」
「あー。そうだった。箱入り娘の珠美を手に入れるのは簡単じゃなかったんだ。私が男なら、珠美をお嫁さんにして、幸せにしてあげるんだけどな」
そう言って悔しがる佐都里とふたり、顔を見合わせて笑った。
「ふふ、ありがとう。生まれて初めてプロポーズされちゃった」