政略結婚ですが愛されています
成功すれば大きな利益につながるとはいえ、失敗すれば金銭的な損害だけでなく信頼をも失ってしまう。
十分な利益を上げている我が社にとって、本当に受注すべきなのかを危惧する声が多かったのもたしかだ。
けれど神田課長は『優秀な社員たちを信じてください』と言って、反対する周囲の声を鎮めた。
そして、緊急プロジェクトチームが発足され、社運を賭けたともいうべき仕事が動き始めたのだ。
『交通ICプロジェクト』と呼ばれるそのプロジェクトに直接関係のない社員でさえその動きを注視し、成り行きに神経をとがらせていた半年間。
社内のすべての部署が、そのプロジェクトへの尽力を惜しまず、休日出勤の際には差し入れをしたり、必要とあれば簡単な確認作業にも協力した。
関係者以外厳秘のものが多く、神田課長の判断により協力の申し出を断ることも多かったと聞くけれど、創業以来続いている“ 全社一丸で仕事に取り組む”という社風が生き、さらに社内の雰囲気はよくなったように感じる。
そして、責任者である神田課長が言う『優秀な社員たち』が結集して進められたプロジェクトは無事にその任務を終え、先日納品を完了した。