政略結婚ですが愛されています


「ここにいるメンバー以外にも、今回の仕事に力を注いでくれた人は多い。もちろん、協力会社の人たちにもかなりの無理をお願いして仕事を進めていただいた。直接かかわっていない社員にも、納期までの間、会議室のほとんどを押さえたことで迷惑をかけている。社長賞を受賞したのは経営企画部管轄の開発課だが、この賞は全社員へのねぎらいだ。……とはいっても、みんなの努力には感謝している。ありがとう」
 
神田課長は、深く頭を下げた。

言葉の端々にうれしさとホッとした気持ちが漂い、その姿からも喜びが感じられる。

ようやく迎えたこの時。口では強気なことを言いながらも、多くの不安を抱え、そしてそれを隠し、部下や上司を引っ張ってきたはずだ。
 
下げていた頭を上げれば、その顔に浮かんでいるのは勝者の笑み。

『どうだ』と言いたげな余裕に満ちた口元は、さらに私の気持ちを引き寄せた。

ワンシステムに入社し、神田課長を知ってから、彼を意識しない日はなかったけれど、どこまで私は惹きつけられるのだろう。
 
高鳴る気持ちを抑えるように、私は手元のパソコンに視線を戻し、再び入力を始めた。

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