政略結婚ですが愛されています


耳に入る神田課長の声に気持ちは上下しつつも、口元を引き締め、揺れる心をごまかした。

「来週、交通ICプロジェクトの成功と社長賞受賞の打ち上げを予定している。費用は会社が負担してくれるから、みんな参加しろよ」
 
その顔を見なくても、声だけで神田課長が楽し気な表情を浮かべているのがわかる。
 
どんな声を聞いても、どんな顔を見せられても、とくとくと響く私の鼓動を止めることはできない。

だけど、どれほど気持ちを寄せたところで、ようやく経験した初恋を、私は手放さなければならないのだ。

「……打ち上げか。どうしよう」

思わず口にした言葉に、いっそう気持ちは沈む。

高揚した空気が立ち込める会議室の中で、ひとりぼっちになったような錯覚を覚えながら、キーボードの上に置いた手をじっと見つめた。
 

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