専務に仕事をさせるには

「もし、君がクビになったら僕が仕事紹介してあげるよ? 行きつけのお店のママさんに頼んであげるから心配しないで良いよ?」


行きつけのお店? ママさん? 

それって夜のお仕事じゃないの?


「あのですね!?」


「僕の誘いを断っても同じ事だよね? 重役達の事を酷い言い方する人間を会社には置いておけないでしょ?」


「それは脅迫ですか?」


「どう受け取ろうが君の自由だよ? 別に脅迫されたと訴えてもいいよ? 女性下着を作ってる会社が女性社員にセクハラやパワハラで訴えられたら、うちの会社は終わりだろうね? 俺はうちの会社にそこまで思い入れは無いから構わないよ?」


何を言ってるの?

それでもあの社長の息子なの?

社長は彼の実の母親。

創立者の娘でデザイナーだった彼女は傾きかけた会社を立て直しここまで大きくした立派な人。

社員を大切にし、私がスタイルの維持に気を使っている事を知っていてプレゼンの後は『無理しちゃダメよ?』と必ず声を掛けてくれる。

あの社長の息子が会社に思い入れは無いと!?

もうイケメンだろうと関係ない!!


バッシン!!


私は彼の頬を拳で殴った。


「痛っ…」


専務は顔を少し歪める。


「私をクビにしたきゃすれば良い! でもね!? 麗美堂は貴方のお祖父様やお母様が大切に守って来た会社なのよ!? それを… それを…」


目頭が熱くなって涙が溢れてくる。

どうして涙が出るのよ…

悲しくなんかないのに…


彼は私を抱きしめて「ごめん…」と謝った。


「どうして貴方が謝るの? 殴ったのは私なのに」


「有難う」


「だからなんで殴られた貴方がお礼を言うのよ?」


「うん… 今はそれしか言えない。 でも本当に嬉しいよ」


この人ドM??





< 11 / 216 >

この作品をシェア

pagetop