専務に仕事をさせるには
「あの… 私このブラウスだけにしときます」
私は近くのハンガーに掛けてあるブラウスを手に取る。
このブラウスも普段私が買う物より随分高いがこのくらいなら払える。
今着てるスカートの上にこのブラウスでなんとかごまかせる。
ロッカーにはカーディガンも置いてあるし。
「ん? 気に入らない?」
「そうじゃなくて、今日持ち合わせが…」
私はクレジットは嫌いでカードは1つも持っていない。
今はデビカードと言う物も有るらしいがそれも作っていない。
いつもニコニコ現金払いなのだ。
特に飲みに行く時は現金も多くは持たない。
酔って鞄を忘れてしまうと悔しい思いをする事になるから。
「今日、仕事をサボらせたお詫びだよ?」
サボらせたって、それは口止め料の様なもので貴方から頂くのは筋違いだと思いますが?
「それとももっと高いブランドが良い? 君は高いブランドは受け取らないと思ったんだけどな?」
「ええここより高いブランドなんて… いえ、そうじゃなくて! 専務に買って頂くのはおかしいと思いまして」
「だからそれは」
「とにかく、仕事は社に戻り次第しますし、午前中の分もきちんと働きますので!」
「フッ君は強情だね? 本当よく似てるよ」
ん? 誰に似てるの?
専務は私の両親は知らない筈でしょ?
他に誰に似ていると言うのかな?
「まぁ、良い。 君はそのブラウスを自分で買うと良い」
専務はそう言いながらもオフホワイトのスーツを買った。
私はブラウスを自分で買いショップで着替えさせて貰った。
ショップを出ると流石に春になったと言えまだ小寒い。
う〜ん… やっぱりちょっと寒い。
ジャケットを着てしまうと昨日とほとんど変わらないし…
まぁ会社までの辛抱だ。
会社に行ったらロッカーにカーディガンは有る。