専務に仕事をさせるには
後部座席の工場長も心配して少しスピードを落とした方が良いと言う。
「大丈夫です!昔、良く走りましたから、この道は熟知してます。それに、もし事故ってもこのスピードだと即死ですから苦しまないですよ?」
私が笑って言うと工場長は冗談はやめてくれと顔を強張らせていた。
私はサイドミラーを見て見たくないものを目にする。
「チッ!イレギュラーがあったか!?」
どうしたと心配する専務。
「専務、私の鞄から携帯出して電話かけて下さい」
専務に電話を掛けてもらうと運良くその人は直ぐに出てくれた。
『鈴々ちゃん、久しぶりじゃないどうしたの?』
「すいません、挨拶は後で!」
私は今走っている所を話し白バイが邪魔だと話す。
『あんたまだそんな事してるの!!??』
スピーカーにしていたスマホから皐月さんの怒声が車中の空気を震わせる。
「違います!もう走りはしてません!とにかく、一大事なんです。私のボスを会社に送り届けたいんです!力を貸してください!」
『ったく…免停は覚悟しなさいよ!?』と電話は切れた。
「リンリン、今のは誰だ?」と心配そうに聞く専務。
するとフェラーリに並行する白バイ警官がこちらに敬礼して前に出てサイレンを鳴らし先行してくれる。
「流石皐月さん!」
横から「皐月って誰だ?何者だ?」と聞いてくる専務に警察官ですと答える。
「皐月さんのお父さんは警察の総監だか、局長だか、なんか偉い人らしいです」と言う。
すると後ろでシートにしっかり体を預け、シートベルトを握りしめていた宮沢さんが驚いている。
「おい!こんな事がバレたらまずい事になるだろ?」
「はい、まずいですね?だから、お二人は何も知らない事に、あくまでスピード違反で捕まった事に!専務達を社へ送った後、私はそのまま警察へ出頭しますので」
皐月さんのお小言を2時間も聞けば帰してくれるだろう?
まぁ免停は確実だろうがそれは仕方ない。