専務に仕事をさせるには
社を着きタクシーから降りるとちょうどロビーから副社長が出て来た。
あ…
私は何も知らない様に真っ直ぐ社屋へと歩き進む。
すると副社長はすれ違い様に「元気でな美美ちゃん」と微笑んだ。
え?私だと気が付いた…
でもその微笑みは寂しそうにも見え、私は振り返り思わず声を掛けた。
「待って!」
副社長の元へ掛けより腕を掴む。
「どうして怒らないんですか?」
「いや、君の事は初めから知っていたからね」
え?
「私だって馬鹿じゃない。要君が秘書をつけた時点で色々知らべさせて貰った。下着姿の写真も見せてもらったよ」と副社長は笑う。
「じゃ、私だと知ったうえで、あの日、宮本さんに合わせたんですか?」
「ああ」
「どうして?副社長は会長や社長を憎んでいたんでは?会社を潰したかったんですよね?」
「ああ、憎んでいた…会長が俺の父親だと思っていたからね…」
え…思っていた?
私達は他の社員の目があるからと、社の近くのカフェへと移動した。
「俺の本当の父親は会長の知人で矢野って人だよ」
矢野…さん?先日亡くなられた?
「俺がそれを聞いたのは、その人が亡くなる3日前だった。会長に会いに行ってくれないかと言われてね…」
「会いに行ったんですか?」
「いや行かなかった、行けなかったよ…突然父親は他にいると言われてもね…」
副社長は運ばれて来たカップの中の琥珀色を見つめていたが、顔を上げ笑った。
「これから警察に行って来る」
えっ警察?
副社長は落ち着いたら親父に恨み言のひとつも言いに行くよ、と席をたって行った。