専務に仕事をさせるには
「さて、【瞳】これはなんて読むか分かるかな?」
「ひとみ。次は俺だ【薔薇】」
「バラ!今度はこれ【瞼】」
「まぶた。アハハ俺には簡単過ぎるぜ!」
「フン!笑ってられるのも今のうちだからね!」
「これは【花魁草】」
「おいらんそう。これはどうだ!【臍】」
「へそ。【雛罌粟】」
「ひなげし。【太腿】」
「ふともも。おい!いい加減降参しろ!」
「あんたこそ降参しなさいよ!」
「俺は負けねーからな!【酸漿】」
「ほおずき。【兀兀】」
「パイパイ」
「ブッブッブー!!こつこつでーす!私の勝ち!」
「お前ね!流れで行ったらパイパイでしょ!」
「エロい事ばかり考えてるからこうなるんだよ!負けは負けだからね!ちゃんと書類に目を通してから、うちと手を組むか組まないか、決めてよね!分かった!?」
アルヴェルトは満足と言うのとは違うだろうけど、悔しそうに「分かったよ!」と言った。
「何年ぶりかな?……リンは俺の事覚えてたのか?」
「ううん、忘れてた…アルヴェルトの事をお母さんに知らないかって聞いたら、『あんたも会った事有るでしょ?』って言われてあの頃の事を教えて貰ったの」
私がアルヴェルトに初めて会ったのは小学生に上がった頃。
母について母の所属していたモデル事務所へ行った時、初めてアルヴェルトに会った。
そのころのアルヴェルトは私の母に恋をしていて、母の顔を見る度、僕のアモーレと言っていた。
私が、「ママにはパパが居るからダメ!」と言うと
「じゃ、俺と漢字バトルして俺が勝ったら美子さんは俺のものだからな!」
「フン!外人なんかに負けないもん!」
私達は事務所の近くのもんじゃ屋でもんじゃを食べながら漢字バトルをした。
そのお店がここなのだ。
「懐かしいな?あの時3勝2敗で俺が勝ったんだよな?でも、美子さんには振られたけど」
「私はあの時アルヴェルトに負けた事が悔しくて、必死に漢字を勉強して漢検1級を取ったんだよ」
私達は時を忘れて、昔を懐かしんでいた。
アルヴェルトの迎えが来るまで。