専務に仕事をさせるには

社に着くと私は先に秘書室へ荷物を置きに行く。


「おはようございます」


「瀬戸さん随分変わりますね?」


「そうですか?」


昨日、室長に鎧を付けてると聞いてから、私もポーカーフェイスを気取る事にした。

気取ると言うと軽い感じがするが、私は至って真面目なのだ。

専務達は何やら難しい仕事を初めて居る。

まだ私は何も知らないが、今後どうなるか分からない。

その時のために母が持っていた眼鏡を掛け髪はしっかりひとつに纏め上げている。

銀縁のスタイリッシュな眼鏡だが髪を纏め上げていると見た目は教育ママゴンといった感じだ。

私は専務室へ行き部屋の拭き掃除を始める。

専務は新聞や雑誌を見るでも無くただ私の掃除する姿をじっと見ている。


「あのなにか? 見られてると気になってしょうがないんですけど?」


「気にしなくていいから早く掃除終わらせて!」


側で掃除されてると落ち着かないんだろうけど仕方ないじゃない! あなたが一緒に出勤して来たんだから!

私は一通り拭き掃除を済ませるとお騒がせしましたと部屋を出ようとした。


「やっと終わったか? 待ちくたびれた!」


専務は私の腕を取ると腰を抱き寄せる。

抗議しようとしたが専務に先手を取られる。


「俺に仕事をさせたいなら、キスぐらいしてくれよ? 本来はまだ君も始業時間前だろ?」


なによガキじゃあるまいし、キスしないと仕事しないってアホか!?

まぁキス1つで機嫌よく仕事をしてくれるなら安いものか?





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