レジーナ フィオリトゥーラ
「う~ん。じゃあ、世界地図とか持っている?」

「ああ。これ。」

そう言うと、ルカは、古びた紙切れを胸元から取り出すと、床に広げた。

「大きい方が、南大陸。今、俺達のいる大陸だ。小さい方が、北大陸。寒いから、人がほとんど住んでいない不毛の地だ。」

ルカは、円を交互に指した。

「南大陸の西側は、大国レルガ帝国が、ほとんどを占めている。今俺達がいるのも、このレルガ帝国の東にあるチェルデモンネという町だ。大陸の東側は、幾つもの小国がそれぞれの国土を統治している。俺も東側は、あまり詳しくないから、なんとも言えないけれど。」

ルカは、赤い×印がたくさんついた部分を指差した。

「えっと、私達は、これからどこに行くの?」

「とりあえず、帝都のアマルガに行こうと思う。図書館もあるし、大陸一情報が集める場所だからな。」

ルカは、レルガ帝国の中心を指しながら、言った。

「ありがとう。少し、分かった。」

「次は、俺が何をしているかだっけ?」

「うん。」

「俺の仕事は、ある人を探すことだ。そのためにもう長いこと旅を続けている。」

「ある人って?」

「俺もよく分からない。名前も顔も知らないんだ。」

「どういうこと?!じゃあ、どうやって探すの?」

ルカの言葉にあきれた私は、声を上げた。

奇妙なことばかりで頭が、パンクしそうだ。

「いや、出会えば分かるらしい。この仕事を命じた方が、そうおっしゃっていた。」

そう言いながらも自信なさげなルカを見ていて、彼自身も戸惑っているのが、伝わってきた。

それでも、忠実にこうして探し続けているルカは、その仕事を命じた人を心から信頼しているのだろう。

「俺の探している人は、誰もが、惹かれずにはいられないそうだ。」

「皆が、その人を好きになるってこと?なんだか、私のお姉ちゃんみたい。」

「お姉ちゃん?姉がいるのか?」

「うん。ちょっと、勝手なところもあるんだけどね。やっぱり、嫌いにはなれないの。」

柊君の隣で幸せそうに微笑むお姉ちゃんを思い出した。

お姉ちゃんと出会って、お姉ちゃんを好きにならない人なんて一人もいなかった。

奔放で身勝手なところさえもお姉ちゃんにとっては、長所だった。
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