レジーナ フィオリトゥーラ
「疑うのは、悪いことじゃない。右も左も分からないこの世界で、お前は、自分だけの判断だけで、帰る方法を探さなくちゃならない。俺は、こんな身だし、信用できなくて当然だ。だからこそ、きちんと話すよ。」

「わ、わたし・・・。」

なんて、言ったらいいのか分からなくて、私は、俯いた。

「理由は、今の所三つある。一つは、お前は、俺の命の恩人だからだ。俺は、お前のために何かしてやりたいと思っている。これは、本当のことだ。二つ目は、お前が、異世界から来たというのに興味がある。俺の探している人は、もしかしたら、異世界の人間かもしれないんだ。何か手がかりになるかもしれない。本音を言えば、俺の仕事にも役立ってくれるかもしれないと思っている。三つ目は、泣き虫だから。ご覧の通り、何かと不便な性質だ。お前に一緒にいてもらうと助かる。」

「結構自分本位だね。」

おかげですっかり涙も乾いてしまった。

「人間は、自分本位な生き物だよ。」

そう言ったルカの瞳は、何の迷いもなく、ひどく澄んでいた。

「ルカは、きっと正直な人ね。じゃあ、私も言うわ。私は、あなたについていく。信じているから、裏切らないでね。」

自分自身に言い聞かせているような気がした。

それでも、よかった。

元の世界に帰るために絶対に不可欠なものに気が付いた。

それは、私自身を信じることだ。

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