レジーナ フィオリトゥーラ
真っ白のウエディングドレスを着たお姉ちゃんは、今まで見た中で一番綺麗だった。

イタリアの、しかもかなり田舎で行われた式に日本からの出席者は、ほとんどいなかった。

こじんまりとした内輪の式になると思いきや、パーティーには、人が溢れていた。

よく見ると、ほとんど見たこともないイタリア人ばかり。

それもそのはず、近所の人たちが、参加していたのだ。

皆酔っ払って歌ったり踊ったりしていた。

お母さんもお父さんもイタリア語も喋れないくせに楽しそうに談笑に参加していた。

遠くには、寄り添うように立っているお姉ちゃんと柊君の姿が、見えた。

いたたまれなくなった私は、その場を逃げるように離れた。

走って走って。

いつの間にか、お城の中に入り込んでしまった私は、気が付くと迷子になっていた。

なんとか、見つけた蝋燭に床に落ちていたマッチで火をつけると、私は、辺りを見回した。

私がいるのは、大きな広間のような部屋だった。

ふと何かの気配を感じたので、振り向くと、後ろの壁に大きなキルトが、飾られていた。

模様は、一面に広がる色とりどりの花。

「マンジャーレ・カンターレ・アモーレ!」

遠くで声が聞こえた。

多分、パーティー会場で誰かがさけんでいるのだろう。

結婚式で何度も耳にした愉快な祝福の言葉を私もなんとなく口ずさむ。

意味は、食べて歌って恋をして。

「マンジャーレ・カンターレ・アモーレ。」

その瞬間、目の前が、光に包まれた。
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