レジーナ フィオリトゥーラ
「マンジャーレ・カンターレ・アモーレ!」

笑い声が、聞こえる。

みんな楽しそうに食べて歌っている。

私は、式場に帰ってきてしまったのだろうか。

ぼんやりと目を開けると、目の前には、キルトの壁掛けがあった。

「え?」

驚いて振り向くと、広間では、大宴会が、行われていた。

真っ暗でほこりっぽかったはずなのに、天井のシャンデリアに灯が灯っていて、長テーブルの上には、ご馳走が並んでいる。

目の前の光景が、信じられない私は、目をこすり、頬をつねった。

いくら目をこすっても状況は、変わらなかったし、頬は、じんじんと痛んだ。

異常なことは、他にもあった。

彼らが、喋っている言葉を私は、なぜか理解できた。

イタリア語に少し似ているが、聞いたこともない言語で、イタリア語もろくに分からない私に理解できるなんて、こんな不可解なことはない。

おしゃべりの内容から察するに、ここでも結婚式を行っているようで、テーブルの端に座っているカップルが、結婚したらしい。

「しかし、めでたい。今年は、新しい花の女王が、誕生する年だろう。もうすぐ、芽吹きの時期だ。お二人の門出としては、最高じゃないか。」

「そうさな。前の花の女王もその前もすばらしい花の女王ばかりだったから、きっと今回も良い女王になってくれるだろう。アンドレーア様とシモーナ様は、幸せなご夫婦になるぞ。」

「それでは、お二人の末永い幸せを祈って。乾杯!」

二人の酔っ払いは、ジョッキをカチンと合わせると、一気に飲み干した。

・・・酔っ払っているせいか、何を言っているのか分からない部分があった。

花の女王?芽吹き?

なんだそりゃ?

男の人は、酒を飲み、女の人は、お皿を持って忙しなく動いている。

どう見たって、異質な容姿の私の存在を気にも留めていない。

結婚式用に普段は着ないワンピースを着ているせいかもしれないが。

意を決した私は、さっきから何度も私の前を横切っている年配の女の人に声をかけた。
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