あの頃、きみと陽だまりで
閉じた瞼の向こうに、明るさを感じる。
ぽかぽかとしたあたたかさに起こされるように、私はそっと目をひらいた。
頭上に広がるのは、真っ白な天井。
ここ、どこ……。
心の中で呟きながら小さく息を吸い込むと、消毒液の独特な匂いがした。
目を動かし見える範囲で確認すると、真っ白な壁の室内で、真っ白なカーテンが揺れているのが見える。
自分ひとりしかいない室内と腕につながれた点滴に、ここが病院であることを察した。
なんで私、病院に……?
置き上がろうとするけれど、ひどくだるい体は簡単には起き上がれない。
仕方なく寝返りを打つだけでも、とそっと動かすと、肩や足からはズキッとした痛みが伝う。
「いっ……」
その痛みについ声を漏らした、その時だった。
ガシャン、となにかが割れる音が響いた。
その音がした方向へ顔を向けると、そこには病室のドアをあけたところだったらしいお母さんが、驚いた顔でこちらを見ていた。
その足元には割れた花瓶と、きれいな花が散らばってしまっている。
「お母さん……どうしたの?」
なんでそんなに驚いているの?
枯れた小さな声で問い掛けた私に、お母さんは丸くした目に涙を浮かべると、それをこぼすより早くこちらへ駆け寄った。
そして横になったままの私の枕元に膝をつき、左手をぎゅっと握った。