あの頃、きみと陽だまりで



「こんな親でごめんね……こんなこと言う資格ないって分かってるけど、でもね、あの日なぎさが生きててくれてよかったって、本当に思った。今も、助かってよかったって、心から思ってる……」



言葉を詰まらせながら、そう言ったお母さんの瞳からは、またポロポロと涙がこぼされる。



「大好きよ、なぎさ。あなたを生んだあの日から、今日までずっと。世界で一番、大切に思ってる」



『大好き』

ああ、その言葉がうれしい。愛しい。胸の奥からあたたかさが込み上げてくる。

愛情の込められたお母さんの言葉に、瞳からは涙がこぼれた。



「っ……うん……」



寂しかった。

いい子でいなくちゃ、心配かけちゃいけない、そんな優等生ぶった気持ちで本音をずっと隠してた。



だけど、本当はずっと、その言葉がほしかった。

甘えられる存在や、言葉がほしかったんだ。



お母さんが泣きながら伝えてくれた言葉に、自然と、新太が言ってくれた言葉を思い出していた。



『生きてほしいって、思ってるよ』



本当だった。

自分を包んでくれるあたたかさがこんなにも近くにあることを、知った。




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