あの頃、きみと陽だまりで
それから、初めてに近いくらい、長い時間お母さんと話をした。
いきなりそんなに沢山は話せないし、度々言葉もつまってしまう。
話せば話すほど、互いのことで知らなかったことばかりなのだと思い知る。
だけど、少しずつ、少しずつ、心の距離を埋めていこう、と。そう思い話すお互いの距離は、一歩ずつ近づく。
そのあと、私が目を覚ましたという一報を聞いて駆けつけたお父さんも、泣きながら私を抱きしめてくれた。
お母さんと同じように、「ごめん」の言葉を繰り返して。
そんなお父さんを素直に抱きしめ返せたのは、きっと、その胸の内と、教師として立派な姿、デスクに飾られた写真の存在を知っているから。
お父さん、お母さん
ごめんね。
心配かけて、ごめんなさい。
その腕が、涙が嬉しいと思えるほど、大好きだよ。
だから、これから家族としてやり直していこう。
足りなかった言葉を補って、遠かった距離を縮めて、ここから。
少し迷ったけど、ふたりに新太のことは聞けなかった。
本当に存在しているかわからない人と1週間過ごした、なんて変なことを言い出したと余計に心配かけるのも嫌だった。
それに仮に新太が言っていたことが事実だったとして、ふたりがその話をしないということは『自分の為に亡くなった人がいる』ということに私の心が耐えきれるか考えてくれてのことだったと思うから。
今は、問いかける言葉を飲み込もうと、決めた。
……それに、誰にも聞かなくても、きっと。
記憶を頼りに歩き出せば、証はきっと、そこにあるはず。