あの頃、きみと陽だまりで
それから私は精密検査などを受け、幸い体にはなんの後遺症ものこっていないことが判明した。
それでも長い時間眠っていたことで低下した筋力や栄養をつけるための生活を送り、1週間が経つ頃には自宅に帰れるようになった。
約2週間ぶりに帰った自宅は、当然だけどなにも変わっていない。広いリビングと、少し散らかった自分の部屋があった。
けれど、私の退院にあわせて仕事を休んだふたりとダイニングで夕飯を食べて、変わらないはずの家の中に、自分以外の存在を感じられることが嬉しかった。
ごはんを食べながらつい泣いてしまった私に、ふたりも、少し泣いていた。
そんな食卓を過ごした、翌日のこと。
「じゃあ、お母さん仕事行ってくるけど、夜には帰るから」
「うん。行ってらっしゃい」
いつも通りに迎えた、朝。
とっくにお父さんは仕事に出て、続いてお母さんも家を出た。
けれど、お母さんは職場の人の勧めで勤務時間を今までより少し減らすことにしたのだそう。
お父さんも、最低でも日曜日だけは、家族のための時間をつくると決めたのだという。
もう幼い子供という年でもないのに、ふたりが自分のために時間を作ろうとしてくれることが、なんだかちょっと心苦しい気もする。
けど、うれしい気持ちがあるのも確かで。
少しの間は、ふたりの気持ちに甘えてみようとも思う。
「……よし」
ふたりが出かけた今、私も着替えて出かけよう。
夢が夢だったのかを、確かめに。