あの頃、きみと陽だまりで
「家族の話を教えてくれた時、新太は絶縁された自分のことを『自業自得』って言ってました。……けど、諦めたフリで、本当は寂しかったんだろうって思います」
思い出すのは、新太が自分の話をしてくれた時の、寂しげな瞳。
『俺、家族から絶縁されてるんだよね』
初めて新太が見せてくれた、寂しさ。
今ここで私だけが知っているその気持ちを、お母さんにも伝えたい。
「寂しくて、自分の居場所がわからなくて、おかしな道に進んでしまって……でも結局、さらに寂しくなってしまって。自分を納得させるように、言い聞かせていたんだと、思います」
だけどこれから、『いつかやり直せる』って思っていたと思う。
新太だって、きっと、まだ生きていたかった。
やりたいことも、伝えたいこともあったはず。
だけどそれでも、私の背中を押すことを優先してくれた。
「ご両親の目にどう映っていたかは、わかりません。でも私にとっての新太は、すごく優しい人だったんです。ちょっと子供で、だけどあたたかくて……そんな新太と出会えて、過ごせて、幸せでした」
今にも溢れ出しそうな涙を、ぐっと堪えて言い切った。
まっすぐに目を見て新太のお母さんの言葉を待つと、緊張にまた手が震えてしまいそうだ。
けど、トラがいるから。たくさんの思い出が、支えてくれているから。
そんな私に、それまで黙って話を聞いていた新太のお母さんは、口をひらいた。