あの頃、きみと陽だまりで
「ずっと、後悔してた。新太と向き合えなかったこと。もめ事ばかりを起こして、怒った主人が絶縁を言い出したとき……どうして止めてあげられなかったのか。主人に叱られても、嫌われても、新太に会いに行けばよかったって」
新太のお母さんの胸にも残る、大きな後悔。
それは、涙とともにぽろぽろとこぼされていく。
「けど、主人も後悔してた。散々親としての役目を放棄しておいて、ろくに話も聞かずに怒りにまかせて新太を追い出したこと。だけど、それを認められなくて、いろんな気持ちと葛藤してた」
後悔という感情を持つのは、新太のお母さんだけじゃない。お父さんも、きっと同じ。
悩んで、悔やんで、葛藤していた。
皆それぞれに、言葉に出せない思いを抱えていたんだ。
「けど、いつか結び直せるんじゃないかって思ってたの。いつか時間が経って……自然と、話せる時がくるんじゃないかって。だって、当たり前に生きていくと思っていたから。私たちも、新太も、いきなり死ぬなんて思ってないから」
離れた場所にいたって、言えない想いがあったって、明日がある。今じゃなくても言える時がくる。
そう当たり前に思っていたことは、当たり前じゃなかった。
『いつか』の日は、必ずやってくるわけじゃない。そう思い知るのはいつも、失ったあとなんだろう。
ぽろぽろとこぼされる大粒の涙に、ぎゅっと胸が締め付けられる。
「……ごめん、なさ……」
「けどね」
『ごめんなさい。私のせいで』そう言おうとした言葉を遮ると、私の目を真っ直ぐに見た。
涙が止まることなくこぼれる、真っ赤になった目で。