あの頃、きみと陽だまりで




『おい、なに見てんだよ。1年』

『……見てないですけど』

『あぁ?んだよその生意気な態度は!!』



小柄な身体のせいか、学校内で年上から絡まれたり、意味もなく喧嘩を吹っかけられることが増え、殴られたりと暴力沙汰に巻き込まれることが増えた。

けど、俺だって痛い想いはしたくない。

やられたくないから抵抗し、やり返すうちに、いつの間にか『問題児』というレッテルは俺に貼られるようになっていた。



『うわ、早坂だ。いこうぜ』

『怖いよね、この前も高校生と喧嘩してたんだって』



違うんだ、俺はただ、自分を守りたかっただけ。

けど、そんな言い訳を聞いてくれる人もいない。

入りたかったサッカー部も、『お前なんかが入れるわけないだろ』と、跳ね除けられた。



悲しい、寂しい。そんな思いすらも誰の耳にも届かない。

それは家族ですらも同じ。家に帰ってもテーブルにお金が置かれているだけで、姿は見えない。



誰も俺を見てくれない。

いいことをしても褒めてくれる人なんていない、悪いことをしても咎める人もいない。

他人は遠巻きに、イメージや噂で語るだけ。



……なら、もういいや。

周りがそう見ているのなら、それに染まろう。



自己を失くしてラクな方へ身を任せ、街に出ては似たような奴らとつるむようになった。

喧嘩や暴力は当たり前。社会に反発して、『子供でなにが悪い』と、煙草や酒にも手をつけた。



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