あの頃、きみと陽だまりで





痛い、ズキズキと全身が痛む

声を出したいのに声が出ない

力も入らない



『聞こえますか!大丈夫ですか!っ……』



救急車のサイレンと呼びかける声が、聞こえる。

その声に応えたいのに、出来ない。



地面に横になったまま、薄く開いたままの目

視界には、真っ赤な血が広がっている。



これ、俺の血?

血の海って、こういうことを言うのかな。

ああ、やばい。これはもう、死ぬかも。



広がる血の先には、目を閉じ同じように横たわる彼女の姿がある。

その目からはそっと、涙が伝っていた。



死ぬのかな

俺も、この子も

見ず知らずの猫を庇ってくれるような、優しい子なのに、こんなところで命を落とすなんて可哀想すぎる。



……いやだ。

自分が死ぬより、悲しい。


『なぎさ!!なぎさ!!』



薄く開いたままの視界の先では、野次馬をかきわけ駆けつける、中年夫婦の姿があった。

悲痛な声をあげ、女の子に駆け寄り『なぎさ』、そう名前を叫ぶ。その様子から、きっとこの子の両親なのだろう。

よく見ればその男性の方は、深津先生であることに気付く。



もしかして、偶然にも彼女が深津先生の言ってた娘……?



先生が、あんなに『生きていてほしい』と願っていた子なのに。

自ら捨てようとして、それでも繋がった命なのに。

こんなところで終わってしまうなんて、残酷すぎるよ。



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