あの頃、きみと陽だまりで
最初の頃のなぎさは、ピリピリとしていて、拒むような諦めたような冷ややかな空気を漂わせていた。
それもそうだろう。
学校にいけなくなり、世界を見限るほどのいじめ。
周りに否定され、口を開けば笑われ、時には暴力を受け……自分が自分でいることの意味すらわからなくなってしまっても、おかしくないと思う。
友達を失い、自分と言う存在を潰される。
それはどんな気持ちだっただろうか、どれほど絶望的で悲しかっただろうか、なんて、想像することでしかはかれない。
けど、自分の弱さに抗おうともがいて、苦しんでいるのも、言葉の端々に感じ取れた。
向き合えばきちんと返してくれる。
言葉に耳を傾け、時折笑顔を見せてくれる。
それが、ただただ、嬉しかった。
そんな彼女にだからこそ、これまで俺がじいちゃんや深津先生からもらった言葉や気持ちを、教えてあげたかったんだ。
ゆっくりでいい。今は納得できなくたっていい。
いつかの君の力になれば、それだけでいい。
海の中で本当のことを話した俺に、なぎさは泣いて引き留めてくれた。
その姿はまるで、少し前の自分のようで、困ったような、嬉しいような、不思議な気持ちを感じさせられた。
『いつか新太みたいな、誰かを照らせる人になるからっ……』
ありがとう、なぎさ。
その言葉だけで、もう、胸がいっぱいだ。
幸せだよ。
俺はもう、ここまでしか一緒にいてあげられないけど、ずっと見守っているから。
なぎさが笑顔でいられる日々を願っているから。
だから時々、ほんの時々でいい。
この1週間という時間を思い出してくれたら、嬉しいよ。
さよなら
ありがとう
大好きだよ
あたたかな想いとともに、心が光に溶けていく。