あの頃、きみと陽だまりで
「っ……」
息苦しさに一瞬で目を覚ますと、そこにはもはや見慣れた木目の天井があった。
室内は明るい朝陽に照らされて、いきなり開いた目に痛い。
けれど、それ以上にこの心を占めるのは、先ほどまでの映像たち。
「……ゆ、め……」
はぁ、はぁ……とあがる息に、自然と額を撫でると、髪をしっとりと濡らすほど大量の汗をかいていた。
『夢でよかった』、そう思うと同時に、現実世界の記憶を思い出し、いっそう息が苦しくなる。
最近、変な夢ばっかり……。
踏切の音、あの日の自分、過去の記憶……生々しい内容の夢たちに、まだ中途半端に感覚が残ってる。
「……くるしい、」
拭いきれない息苦しさに、横になったまま自分の体へ目を向けた。
するとそこには、私のお腹の上に乗りまったりとくつろぐトラの姿がある。
あぁ、猫が乗っていれば、そりゃあ確かに苦しいわけだ……。
「っ……お前のせいかバカ猫―!!」
『ニャァーンッ!』
「わー、朝から元気だね、若者~」
体をガバッと勢いよく起こしトラを振り落とすと、ちょうど戸を開けて新太が姿を見せた。
今日もラジオ体操の時間なのだろう。その黒いジャージ姿も見慣れたものだ。
「ちょっと新太、トラ勝手に部屋入れないで」
「と言われても……トラしか知らない抜け道があるみたいなんだよね」
これだから古い家は……!
チッと舌打ちをすると、『まぁまぁ』というように苦笑いを見せていた新太は、なにかに気づいたようにこちらへ近付く。