あの頃、きみと陽だまりで



12月4日、今日も天気は晴れ。だけど、不快な夢で目が覚めた。

こんな朝も変わらずに、新太はいつも、私のことを全て見透かしているかのようだ。



……お父さんのことのように、分かっていて黙っていることもあるのかもしれない。

けど無理に聞いてきたりはしなくて、笑顔を見せて、私の視野を変えてくれる。

見えなかったことや知らなかったことを、教えてくれる。



不思議な安心感と、包容力を感じさせる人。



「あっ、きたきた!よしっ、今日も元気に始めますか!」

「……はいはい」



縁側へやって来ると新太の声とともに、いつものラジオ体操の曲が鳴り始めた。

そしてまずは、背伸びの運動から。曲に合わせて、両腕を振ってひとつひとつ動きをこなしていく。



「ほらなぎさ!腕の振りがちいさーい!」

「……あーうるさい」

「うるさいとか言わない!ほら、いち、に!」



元気よく言いながら大きく腕を振る。そんな新太の表情はいつも明るくて、楽しそうで、悩みとかはなさそう。

友達もきっと多いだろう。時折幼さも感じられるけど、人としてはきっと、とても大人な人なんだと思う。



……私とは、真逆だ。

時々その笑みを直視できなくなるほど、眩しい。そう思うと同時に、つられて明るくなれる自分もいる。



「新太、今日学校は?」



腕をふり、体を動かしながらたずねると、新太も同じ動きをしながら答える。



「今日は休み。だから一日家にいるよ」

「……いつも休んでる気がするけど大丈夫なの?」

「失礼だなー、行くときはちゃんと行ってます!」



昨日、一昨日とあまりしっかりと学校に行っているイメージはないんだけど……本当に大丈夫なんだろうか。

まぁ、授業時間や日数なんて学校や学科によって違うか。

口をとがらせた新太の、ちょっとマヌケな顔を見ながらそう思った。


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