あの頃、きみと陽だまりで
それから朝食を食べ終えた私たちは、それぞれの時間を過ごした。
居間でトラと遊びながらテレビを見て、ぼんやりとした時間を過ごす私。
その一方で新太は食器を洗って洗濯をして……とあれこれと動くうちに、気づけば姿は見えなくなっていた。
「……今日のテレビ、つまらなすぎ」
不意に、うーんと伸びをしながら呟くと、自分の声ひとつが居間に響いた。
いつもの平日午後のドラマの再放送はやらないし、ワイドショーも今日は政治の話ばかり。つまらなすぎる。
ほかにやることもないし……そうだ、たまには散歩とか行ってみようかな、とふと思いついた。
自宅にいるときは、極力外に出たくなかった。
けどこの街なら私を知る人はいないから、人目も気にならない。それに新太も私が外に出ることは嬉しいみたいだし。
昨日の、少し嬉しそうな新太の表情を思い出して、その気持ちに応えたいと思える自分がいる。
そう、隣ですやすやと昼寝をするトラをそのままに、私は立ち上がる。
新太から『着ていいよ』と渡されていた少し大きいパーカーを着て、一応寝癖さえ簡単に直しておけば、その辺を出歩くには充分だろう。
あ……新太に声、かけておくんだっけ。
今朝言われた通り声をかけるべく、まだ自分の部屋やトイレ・お風呂以外不慣れなこの家の中を歩く。
新太の部屋はたしか、2階の角部屋……。
ちょうど居間の真上に位置するところで、もともとはおじいちゃんが使っていた部屋だって、新太が言っていた。
建物自体の大きさに対して、ひと気のないこの家の中を歩くと、古い床がミシッといちいち音をたてた。
……ここだ。
2階の一番奥、角にあった茶色いドアの前で足を止めて、トントンとノックする。