あの頃、きみと陽だまりで
「っ……なぎさ!!」
その瞬間、大きな声で名前を呼ばれると同時に、腕を力強く引っ張られた。
走っていた足を止められ、意識を現実に引き戻されるような感覚に我に返る。
見れば後ろには、私以上に汗だくの新太がいた。
「あ……ら、た……?」
「なにしてるんだよっ……あー……みつかって、よかった……」
はぁ、はぁ、と苦しそうに息をする度にあがる肩。それは、新太が全力で駆けつけてくれた証だ。
背後ではガタンゴトン、と電車が通り過ぎ、遮断機が頭上に上がる音がした。
「なんで……」
「気づいたらいないから!ったく、声かけてって言ったのに!」
「だって、新太寝てたから……」
突然現れた新太に驚きがかくせず、唖然としたまま言うと、新太は「うっ」と気まずそうな顔をする。
心配したり、怒ったり、渋い顔をしたり……コロコロと変わるその顔に安心感を感じて、心は徐々に冷静さを取り戻していく。
……私、今、新太が止めてくれなかったら、どうなってた?
きっと、衝動的に飛び込んでいた。
踏切に飛び込んで、そのまま電車に……。
自分の行く末を想像して、今更少し震えてきた。新太はそんな私に、掴んだままの腕をぐいっと引っ張り、頭を抱き寄せた。
新太……?
熱い体温が、体を包む。
いきなり、どうしたの。そう問いかけようとする言葉を遮るように、その胸からは、ドクン、ドクンと早い音が聞こえる。