この広い世界で、2度目の初恋を


「樹く……」

「わり、何でもねーから……」

それから先は聞くなと言わんばかりに視線を反らされた。 

真っ直ぐ目を見て話す人だと思ってたけど…樹くんらしくない。

ーキーンコーンカーンコーン

不思議に思っていると、午後の数学の授業が始まるチャイムが鳴った。


「じゃあ……樹、添田、席戻るな!!」

「あっ、うん!!」

まるで逃げるかのように立ち去る亮くんに、私は首を傾げながら、数学の教科書を取り出す。


ーカラカラカラカラ…

教室に入ってくる沖田先生に、みんなが自然と立ち上がる。

「礼」

「「お願いします」」

挨拶をして、着席する。

すると、トントンと肩を叩かれた。

横を見れば、樹くんが心配そうに私を見つめていた。

そして、沖田先生をチラッと見ると、「大丈夫か?」と視線で訴えてくる。



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