この広い世界で、2度目の初恋を
「スミマセン、何でもありません」
「えぇ〜気になるぅ!!」
あからさまに落胆する三枝。
俺は特に気にせずとんぼ玉をYシャツの中にしまった。
なんとなく、これ以上誰かの目に晒すのが嫌だった。
これは、俺とあの子との思い出だ。
ーキーンコーンカーンコーン
すると、次の授業の予鈴がなる。
ぞろぞろと皆が席につく中、立ち上がった亮ちゃんが、ポンッと俺の肩に手を置いた。
「樹、もしダメならさ、俺にも協力させてくれな?」
「亮ちゃん……」
「添田に樹がどんなにいい奴なのか、たっぷりすり込んでやるからさ!!」
「ハハッ、そりゃ頼もしいな」
亮ちゃんの笑顔に救われつつ、俺はグッと服の上からとんぼ玉に触れる。
この手に感じる確かな感触に、力が湧いてくるようだった。