この広い世界で、2度目の初恋を
「あのなぁ、七海はひとりぼっちになんてなんねぇよ。俺には、七海が必要だからな」
「私が……必要?」
首を傾げると、宇佐美くんから優しい笑みが向けられる。
そして、また頭を撫でられた。
「そうだ、その理由は……いつか、ちゃんと言うからよ」
なぜか、照れくさそうに顔を赤くする宇佐美くんに、ますます首を傾げた。
「だから、アンタには用はねぇーよ、さっさと俺らの前から消えろ」
「っ……後悔しますよ」
「望むところだな」
宇佐美くんに言い負かされた沖田先生は、逃げるように数学準備室を出ていく。
すると、私と宇佐美くんの2人きりになった。
抱き寄せられたまま、私は宇佐美くんを見上げる。
「宇佐美くん、ありが……」
「七海、お礼も嬉しいんだけどよ、俺のことまた名前で呼べよ。俺、その方が嬉しいんだけど」
「あ……」
困ったような、そんな笑みを浮かべる宇佐美くんに、私はゆっくりと頷いた。
「……樹くん」
「おぉ、やっぱそっちのがしっくりくんな」
不思議……。
私も、いつの間にか樹くんって呼ぶほうがしっくりする。
前は、名前を呼ぶことに照れてたのに…。