この広い世界で、2度目の初恋を



「っ……ちょ、ちょっと……ごめんなさいっ」

「は、はぁ!?七海!!」


私は堪らずそこから逃げ出した。

全力で駆けて、行く宛もない私は、保健室に逃げ込む。


ーガラガラガラッ!!

「はぁっ、はぁっ!!」

「あれ、添田さん、戻ってきたんだね?」


息を切らしている私に、鈴原先生は気にすることなく優しい笑顔を向けてくれる。


「鈴原先生……」

「確かめてきたんだね」


鈴原先生の言葉に、コクンッコクンッと頷いた。

そして、両手でぐちゃぐちゃな顔を覆った。


「私の探してた人だった……」


だからだ、樹くんを見る度にあの王子様の笑顔が重なるの。

胸が、忘れた恋を思い出させるの。

全部全部、樹くん自身が、あの王子様だったからだ。








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