この広い世界で、2度目の初恋を
「う、宇佐見くん離し……」
「負けんな、あんなバカ教師なんかに!!」
宇佐見くんは完全に怒りスイッチが入っていて、いよいよ教室の前にたどり着いてしまう。
教室の扉から、沖田先生の声が聞こえる。
この、薄い扉の向こうに……。
そう思ったら、怖くて不安で足がすくんでしまった。
「む、無理だよ……私には出来ない…」
「このままでいいのかよ?」
「私も、もう目立ちたくない……先生も、同じ気持ちなんだよ、きっと…」
俯いて、自分の履いている上履きに視線を落とす。
これ以上、傷つきたくないから、こうしてなるべく影になろうとした。
言葉を発さず、声を消して、気配を消して……。
地味に地味にって、やってきたんだから…。
「……変わらない世界に絶望してるだけじゃ、何も変わらねーんだよ」
「え……」
「傍にいてやっから、抗え。でねーと……俺が、見ててむしゃくしゃする」
なぜか……宇佐見くんの方が、私よりも辛そうな顔をしてる。
どうして……宇佐見くんには関係のない事なのに…。
それが不思議だと思うのと同時に、ううん……それ以上に、そんな思いを宇佐見くんにさせたくないと思った。