この広い世界で、2度目の初恋を


私は、何て送ろうか悩んで、結局《元気です。宇佐見くんは元気ですか?》と同じような内容で返した。

送信ボタンを押して、ケータイを顔のすぐ横に置いて体を横にする。

すると、首から下げた とんぼ玉のペンダント が揺れたのに気付いた。

それを手にとって 電気の光に透かして見ると、青いキラキラとした輝きに、黄色いひまわりが浮き彫りになって見える。


「王子様……」

あの日、8歳の夏……。

私を冷たい川の中から救い出してくれた王子様。

私と同じように小さい手で、必死に引き上げてくれた。

何でかな……あなたの事を思い出すたびに、胸が温かくなるの。

恋なんてもうしないって思うのに、その消えた火を灯そうとしてくる。

だから、ずっと肌身離さず持っていても、決してマジマジとは見ないようにしてきた。

なのに、どうして今……王子様との思い出を振り返ろうとしたんだろう。  

不思議な気持ちだった。



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