この広い世界で、2度目の初恋を

「気づかないふりをしてるだけだ」

「っ!!」


見透かされた……。

宇佐見くん、どうして分かったんだろう……。

私が長年自分を守るためにしてきた処世術に、宇佐見くんは気づいた。


「沖田の野郎……あー、イライラする!!」

「う、宇佐見く……」

「何であんな野郎の為に添田が苦しまなきゃいけねーんだよ!!」

「っ!!」

眉間にシワを寄せて、悲しげに叫ぶ宇佐見くん。

私は枯れた心が潤って、冷えた体が温まるのを感じた。

宇佐見くん、もしかして……もしかしなくても、私の為に怒ってくれてる?

私の痛みを、自分のことのように痛がってくれる、優しい人。

私がこの1年で失った、温かい感情が、蘇るような、不思議な心地よさがあった。





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