この広い世界で、2度目の初恋を


「わぁ〜っ!!」

「七星、あんまり走っちゃダメだよ。他の人に迷惑かけないようにね?」

「はぁーい!」

走りだそうとする七星を慌てて止める。

七星は、頷いて宇佐美くんの手をグッと引っ張る。


「樹お兄ちゃんはサメ見たことある??」

「んー、実物は初めてだな」

「強いんだよ!!」

そう言いながら歩き出す宇佐美くんと七星の背中を見送りながら、温かい気持ちになった。

七星ってば、お兄ちゃんができたことが嬉しいんだ。
 
あたしでは埋められない何かがあるんだろうな。

男の子ならではっていうやつだ。


「あ……」

2人の後をついていきながら、ふと大きな水槽に目を奪われた。

その中で自由に泳ぐ魚の群れに、ブクブクと泡ができては消える。

あの日、川で溺れた時の、水泡が泡立つ様に似ていた。




< 92 / 300 >

この作品をシェア

pagetop