この広い世界で、2度目の初恋を
「わぁ〜っ!!」
「七星、あんまり走っちゃダメだよ。他の人に迷惑かけないようにね?」
「はぁーい!」
走りだそうとする七星を慌てて止める。
七星は、頷いて宇佐美くんの手をグッと引っ張る。
「樹お兄ちゃんはサメ見たことある??」
「んー、実物は初めてだな」
「強いんだよ!!」
そう言いながら歩き出す宇佐美くんと七星の背中を見送りながら、温かい気持ちになった。
七星ってば、お兄ちゃんができたことが嬉しいんだ。
あたしでは埋められない何かがあるんだろうな。
男の子ならではっていうやつだ。
「あ……」
2人の後をついていきながら、ふと大きな水槽に目を奪われた。
その中で自由に泳ぐ魚の群れに、ブクブクと泡ができては消える。
あの日、川で溺れた時の、水泡が泡立つ様に似ていた。