ひとナツの恋
「花火何買うー?」
銀行からお金をおろしたあと涼しいスーパーに入って花火を見る。
…花火か…花火を見ると思い出す。
最悪の夏の日。あの日から私は夏が大嫌いになった。
昔はいっぱいしたな。
お小遣いなんか無かったのに、親に頼み込んで買ってもらって海辺でギャーギャー騒いだ。
あんなことしなければ今頃もっと楽しかったのかな…?
あそこで失敗しなかったら…
「夏…?どうした、泣きそうだぞ?」
「え、そ…そんなことないよ」
ははって笑って誤魔化したけど、絶対うまく笑えてない。
そんな私に海渡は続ける。
「なぁ夏、夏はなんの花火が好き?
やっぱ打上は必須だよなー線香花火も必須だな。うん。
あ、ネズミ花火あったら絶対こいつらギャーギャー騒ぐぞ」
一つ一つ手に持って私に聞いてくる。
「は?海渡、お前に打上げ花火向けてやろうか」
「それ傷害罪だぞ。殺人未遂か?」
…傷害罪…
「いいや、全部買っちゃえ!!金持ち海渡」
「しゃーねぇーなー
一人5000で4人で2万か。ほとんど買えるな」